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特定非営利活動法人がんサポートコミュニティーは、がん患者さんとそのご家族のために専門家による心理社会的なサポートを提供するNPOです。

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肝臓がんLIVER CANCER

「空を見あげていたら」Y・U(50歳代男性、肝臓)

20106月、ちょうど南アフリカで男子サッカーのワールドカップが開かれているとき、私はラジオ波による肝臓がんの治療を受けた。電話で主治医に病名を告げられたのはその1ヶ月前。たまたま別のことで受けたCTで肝臓に腫瘍が見つかり、「まさか」と思っていたが、下された診断は肝細胞がん。電話を切ったあと、胸をたたいて泣いた。それから顔を洗って家を出た。初夏を思わせる日ざしのなか、予約のあった歯科医院へ。帰りにがんの本を買い込む。
20代で慢性肝炎の診断を受けてから病気と折り合いながら生きてきた。集団予防接種の際の注射器の使い回し。それが原因で幼いときにB型肝炎ウイルスに感染した可能性が高い。そして今度はがん。強い感情がわいてくる。怒り、嘆き、悲しみ、怖さ、不安、後悔…。そのひとつひとつに触れていく。家族や友だち、仲間に支えられた。
がんの治療から1ヶ月、ワールドカップはスペインの初優勝で幕を閉じた。(優勝の瞬間、テレビの前で歓喜の叫びを上げる。近所の皆さん、早朝からごめんなさい!)毎日の生活が戻ってくる。晴れの日、曇りの日、ときどき土砂降り。そして、311。衝撃は大きかった。わが生まれ故郷、福島よ。
20121月、寒い日が続く。公園の雑木林で空を見あげていたら、くぬぎの高い梢に一羽の鳥が舞い降りた。日を浴びて白く光っている。カラスほどの大きさだがずっと力強い。顔は黒く、くちばしが鋭い。タカだ!(しまった、双眼鏡を置いてきた!)やがて枝を離れ、ゆっくり旋回しながら高度を上げ、西北の空へ悠然と飛び去る。わずか数分間のできごと。胸に興奮が残った。
タカが舞う空の下、私は大地に立っている。自分のまわりに空間が生まれ、つながりが広がる。静かに力が満ちてくる。


記憶には“エピソード記憶”と“意味記憶”の二種類があるとか。意味記憶とは本を読んだりして得た知識のこと。一方のエピソード記憶とは、体験したこと、いわゆる思い出のことで深く記憶に残るもの。Y・Uさんのお話はまさにエピソード記憶そのものですね。


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